5歳から始めること(子どもの口の中は、何歳から気にしたらよいでしょうか?)
5歳0か月からプロフェッショナル(小児歯科医)に診てもらいましょう。うけくち(反対咬合)の場合は3歳0か月からです。
5歳というのは…(むし歯の考え方)
一生使う永久歯は5歳半くらいから生え始めます。これから生えてくる永久歯を、むし歯にしないために5歳から一生懸命しましょう。乳歯の時期にむし歯がない子どもは、そのまま永久歯もむし歯にしないようにしましょう。子どものむし歯は、おやつの与え方と仕上げ磨きです。
現在は口腔衛生観念が向上し、むし歯の状態が昔ほど悪くありません。生後8か月くらいに乳歯が生えてから自己流で仕上げ磨きをしても、そんなにむし歯にはなりません。ベビーブームの頃に「むし歯の洪水」という時代がありましたが、それとは比べようもないくらいきれいです。
万が一、がんばっても、乳歯がむし歯になってしまったら、キチンと治療しましょう。そして永久歯への生え替わりまで使えればいいんです。いずれ抜けてしまう乳歯だからと言って、むし歯を放置してはいけません。泣く子どもの治療ができない歯医者に行くと「そのままでいい」といわれる場合があります。小児歯科へ行きましょう。
5歳というのは…(はならび・噛み合わせの考え方)
5歳になると、7番目までの永久歯のタネ(歯胚)がレントゲン(パノラマ・レントゲン)写真に写ってきます。8番目の親知らず(智歯)は10歳になるとレントゲンに写ってきます。先天欠如(先天性部分無歯症)といって、人類が進化したため歯が退化して永久歯が足りない子が、全体の10%くらいいるといわれています。2番目(側切歯)・5番目(第2小臼歯)・7番目(第2大臼歯)あたりの永久歯が退化しやすいといわれています。また、過剰歯(上顎正中埋伏過剰歯)といって余分な歯がある場合があります。放置しておくと永久歯の歯並びが悪くなります。歯が退化して無くならないまでも、歯の格好(形態)が退化してしまうこと(栓状歯・矮小歯)もあります。5歳になったらレントゲンを撮って確認しましょう。
マイナス1歳からの歯育てという歯医者もいますが…
妊娠中の母親の歯周病
妊娠がわかった時点で気を付けることは母親の歯周病です。歯周病が酷いと、早産・低体重出生児の原因になります。小さく生まれると成長発育に何らかの影響が出ることがあります。いちばんは、その児が成人になったときの身長が低いことが懸念されます。もし、ちょっと小さく、ちょっと早く生まれちゃったら、しかるべき時期に、(小学生になったら)内分泌内科に相談し、成長ホルモンなどに気を配っていると、低身長や思春期早発症などを予防できます。
小さく早く生まれた子どもの歯
妊娠中から(胎仔の時期に)子どもの歯に影響が出ることは、せいぜい乳歯のエナメル質形成不全ですが、しかし悪阻を生活習慣でコントロールするのは難しいことです。むしろ母親の日頃の口腔衛生習慣が悪いと、生まれてくる子の口腔衛生状態も悪くなりがちで、母親もこどももむし歯が多いという事です。妊娠したら生まれてくる子どものために生活を改めましょう。予防医学が普及し、いろいろな情報があふれているので、自身できちんと情報収集しましょう。自分に都合のいい情報だけを信じるのでなく、スタンダードな情報を集めましょう。
5歳から気を付ける時期、前期、中期、後期
1)前期
最初の歯が生えてから6年かかって乳歯が永久歯に生え変わります。最初に下の前歯が生え始めてから2年間のあいだに、下の前歯4本、上の前歯4本と最後の乳歯の後ろの6番目に6歳臼歯という永久歯が生えます。合計12本生えます。昭和までは6歳臼歯から生えてくることが多かったものの平成以降は下の前歯が最初に生え変わることが多いです。
2)中期
上の前歯4本が生えそろったら、そこから2年間生え変わりのお休みの時期に入ります。
3)後期
後半戦は、3-4-5番目の脇の側方歯が生え変わって(側方歯群交換期)、最後に7番目が生えて永久歯列の完成になります。8番目を親不知(智歯)といい18歳くらいで生えてきます。
側方歯群の交換の順序はバリエーションが多く、下は3→4→5番が多く、上は日本人は4→3→5と生え変わることが多いです。欧米人は4→5→3です。この生え変わりの順序しだいで八重歯になることもあります。
5歳からの前期
5歳から始めること 前期
5歳から8歳あたりまでで、(最初の永久歯が生え始めてから、上の前歯が4本生え変わるまで)下の前歯が生えて、1年後に下の2番目と上の1番目、その1年後に上の2番目が生え変わります。この2年の間に6歳臼歯が生えてきます。
むし歯のこと
永久歯は絶対むし歯にしたくないものです。むし歯予防のメイン・ディッシュは、仕上げ磨きと、おやつの与え方です。サイド・ディッシュにフッ素とシーラントがあります。
歯が生え始めてから仕上げ磨きは続けているかと思います。すでに乳歯がむし歯になっていて治療しているのなら何が悪かったのか考えましょう。ここは自分だけではなかなか解りませんので、歯科医院で相談しましょう。今までにむし歯がない場合は、その育て方が100点です。今までの育て方(おやつ・仕上げ磨き)が、その子どものむし歯のなりにくさにマッチしているのでそのまま続けましょう。そのほか歯科医院でフッ化物塗布やフィッシャー・シーラントをしてもらいましょう。ご家庭でできる、フッ化物洗口法も始められると完璧ですね。
おやつの与え方
むし歯は口の中にいるむし歯菌が、食物の中の糖を食べて酸を作って歯を溶かす病気です。溶けた歯は唾液のなかのカルシウムを取り込んで修復されます(再石灰化)。
つまり「食べて」→「歯が溶けて」→「食べてないときは修復(再石灰化)」の繰り返しになります。ところが食べ続けていると、この修復が起こりません。食事・おやつは時間のメリハリをつけて与えましょう。けっして「砂糖をあたえない」ことが大事なことではありません。しょっちゅう食べていると再石灰化が起こらない。
また、おやつの回数が多いとむし歯が増える傾向がありますので、不必要な与え方は考え物です。
だらだら食いは、むし歯の原因になります。
食事とおやつは時間を決めて、「食べてる時間、食べていない時間」をつくり、再石灰化を意識しましょう。
仕上げ磨きのこと
この時期、最初の永久歯が生えてきました。仕上げ磨きの仕方の詳しくは、0-1-2歳にするべきこと(後述)をご覧下さい。仕上げ磨き卒業は、上手に絵が描けるようになる小学校高学年ですから、まだまだ仕上げ磨きが必要な時期です。こどもの仕上げ磨きはあっという間にタイムアウトになってしまうことがありますので(笑)永久歯から磨きましょう。前歯から生え始めます。次いで6歳臼歯という奥歯が生えてきます。奥をつつくように磨くと(必要なんですが)子どもは嫌がるものです。子どもが嫌んだくなる前に、まず磨いてしまいましょう。上の前歯が7歳ぐらいで生えてきます。この時期、上の前歯もむし歯になりやすいです。
この時期のしあげ磨きは、6歳臼歯を磨いて、上の永久歯の前歯を磨いて、下の永久歯の前歯を磨いて、残りの乳歯を磨きましょう。
はならび・噛み合わせのこと
下の永久歯の前歯は、8割がたの子どもは乳歯が抜ける前に、裏側から永久歯が生えてきます。この時期、乳犬歯間幅径が増大し(すきっ歯になり)、裏側の歯ぐきがもっこり膨らみ、乳歯がぐらぐらすると、永久歯が生えてきます。乳犬歯間幅径(すきっ歯)が十分であれば、永久歯はきれいに並びますし、 永久歯が生えてきたら、残っている乳歯を抜歯してやります。この空隙に永久歯が入ればいいのですが、入らないようであれば、隣の乳歯を“削って”場所を確保します(咬合誘導・Disking)。けっして「隣の乳歯まで抜歯」してはいけません。この隣の歯を削るのは、後述する(後半戦、P-@@)リー・ウェイ・スペースをあらかじめ使うためです。
乳歯が1本抜けて永久歯が1本生えてきますが、隣の乳歯まで抜いてしまったら、1年後にその下の永久歯が生えてくる場所がなくなってしまいます。
咬合誘導・ディスキング・Disking
歯が生えてくるタイミングを見計らって、乳歯を抜歯したり、しなかったりしつつ、永久歯の自然に生える力を利用しつつ、顔の骨格に沿ったはならび嚙み合わせを作り上げる治療を、咬合誘導とかディスキングといいます。歯が生えるタイミングはレントゲン写真で診断しないとわかりません。永久歯が生えてきた時点では遅いことが多々ありますので、まずは5歳になったらレントゲンを撮ってみましょう。
バクシネーターメカニズム
歯列から離れたところから生えてきた永久歯が動く仕組みは、後ろから押す舌の筋肉と、外から押し返される唇・頬の筋肉の力です。このとき指しゃぶりだったりの余計な力がはたらくと、歯ならび・噛み合わせが崩れます。指しゃぶりなどの口腔習癖は、生理的に3歳までは増える時期です。3歳から4歳までに減少するはずです。4歳の誕生月に指しゃぶりが残っているようなら、そこで本人に辞めるように説得します(辞めさせるように仕向ける絵本があります)。4歳から5歳くらいまでの1年かけて辞めさせて、5歳半からの永久歯への生え変わりに備えます。
永久歯は歯並びから離れたところから生え始め、乳歯がちょうどいい時期に抜けてしまうと、裏から舌の押されて、表から口唇や頬に押し返されてきれいな馬蹄型に並んでいきます。永久歯が生えてきたのに乳歯が抜けていない場合は、歯並びのために乳歯をとっとと抜歯しましょう。子どもが泣くのを嫌がる歯医者は「自分で抜いていいよ」と言いますが面倒くさがっているだけです。自分で抜いても歯並びが悪くならないから「自分でいい」のか?聞いて見ましょう。
永久歯が生える時期は?順番は?
乳歯が抜けたから永久歯が生えるわけではありません。また、乳歯の真下から生えてくる場所と、乳歯からずれて生えてくる場所があります。
骨の中で、永久歯のあたま(歯冠)ができて、次いで根っこ(歯根)が伸びてきます。歯根は最終的には歯冠の約2倍の長さになります。歯痕の長さの1/2から2/3くらいできるときに一番生える力が強くなって生えてきます。この時に隣の子どもの歯を削ったりして生える場所を作ってやると、その方向へ動いてくれます(咬合誘導・Disking)。
歯が生えて2年くらい経つと根の先まで完成します(根尖まで完成)。こうなると隣に隙間があっても、もう動きません。あとは矯正装置を使って動かしてやることになります。
簡単に抜いてはダメな理由(抜歯の時期)
咬合誘導の際に、永久歯の生える場所を確保するからと言って“簡単に”隣の乳歯を抜く歯科医もいますが、これはいただけません。咬合誘導のひとつに連続抜去法という治療があります。どうしても歯の土手(歯槽提)と歯のひとつぶひとつぶの大きさが“明らかに”そろわない場合は、歯列矯正で抜くべき歯(第一小臼歯)を時期を見て抜歯する場合もあります。その際はセファロ・レントゲン写真(矯正の規格写真)を撮って、小野の回帰方程式でA.L.D.(Archi Length Discrepancy)を計算して判断します。
歯を抜くと歯槽提は痩せて生やせる場所が狭くなります。あまりに早期に抜歯してしまうのも考えものです。