(1)開咬という不正咬合を治す
TPC(tongue posture corrector)装置
【歯が伸びてこない?!】
前歯が生える時期に、舌を前に突出する癖(舌前突癖)があると、上下の前歯が噛み合わなくなります(伸びてこなくなります)。
歯が伸びる力(萌出力)が残っている時期に、舌を前に出さないようにすると生えてきます。舌前突癖がひどいと、前歯どうしが被かぶらなくなって、「開咬」という“出っ歯“になります。
開咬は発音に影響が出て、サ行が抜けたり、英語の「th」が発音しにくくなります。
麺類などの前歯で噛みちぎるような食事も苦手になります。
そのまま(開咬のまま)大人になってしまうと、顎関節症になりやすく、治しにくくなります。

〈舌前突癖〉
【正常な舌の位置】
舌の前1/3は口の天井に軽くくっついており、歯は咬み合っていない(食いしばっていない)、口唇は軽く閉じている、のが理想的です。
【TPC(Tange Posture corrector)】
TPCの前方の突起は、舌を前に出させないようにするためでなく、口の天井(口蓋)に自分の舌を持ち上げることによって、舌の正しい姿勢を習得します。舌を前に出すとプレート(TPC)がはずれてしまうように働きます。


〈TPCの作用〉

〈口に入れたようす〉

〈TPCの設計〉
【TPCはいつ使うの?】
夜、寝ているときにつかいます。
【TPCの手入れの仕方】
TPCの前方の突起は、舌を前に出させないようにするためでなく、口の天井(口蓋)に自分の舌を持ち上げることによって、舌の正しい姿勢を習得します。舌を前に出すとプレート(TPC)がはずれてしまうように働きます。
*注意*
とりはずせる(可撤式)装置は使わないと治りません。この装置で治らない時は歯列矯正になります。
はたして緊密な咬合を創ったらヒトは自然に咬むようになるでしょうか?
補綴治療にせよ、歯列矯正にせよ、緊密な咬合を付与したら、それだけでヒトは必ず咬むようになるのでしようか?近藤悦子の MuscleWins!は筋機能を利用して術後が長期安定する歯列矯正です。
Muscle Wins!の矯正歯科臨床というと、ガム・トレーニングばかりが注目されますが、はたして、それだけで歯列が良くなってゆくのでしょうか?骨の固まりきった歯にガム・トレーニングだけで歯列・咬合が改善するのでしょうか?鼻呼吸の問題もあります。そして近年、主機能部位や快適咬合理論で注目されている第一大臼歯の咬合を、補綴にせよ矯正にせよ、気にして治療に臨んでいるでしょうか?長期安定とは何でしょう?
この仙台勉強会では、MuscleWins! テクニックでの、咬合の考え方、診断、治療方法、顎間ゴムの使い方、ガム・トレーニングの開始時期などを抄読してゆきます。本年度は年3回を予定しており、1回目は総論、2回目はおさらいとI級症例について。3回目はおさらいと日級症例の治療のポイントを解説します。
MuscleWins! は咬むトレーニングをしながら、緊密な咬合を創りあげてゆきます。“きちんと咬む”“強すぎない弱すぎない適切な咬合圧で咬む”ことは訓練によって習得することで、これにより長期咬合の安定をはかります。近藤マジックで重視される舌骨位はそれらの指標となり、また骨格的不正の考え方の元になります。
第1大臼歯の歯軸、M1 関係。
大切な M1関係から診るのですが近藤の理論では上顎第1大臼歯の歯軸を延長すると必ずKeyRidgeを通ります。III級は上の6番が遠心傾斜で下の6番は近心傾斜していることが多く、II級は上下顎6番とも近心傾斜していることが多いです。そして近藤テクニックでは上顎6番はKeyRidge を中心に傾斜しかせず、これを改善することから始まります。
術前

術前、上顎6番は遠心に傾斜しM1 関係はIII級で歯軸の延長は KeyRidgeに向かい、術後の同歯の歯軸もKeyRidgeに向かいM1関係はI級に改善されます。
術後



咬合の安定のためには、歯軸は機能的咬合平面に可及的に直角に近いことが好ましく、咬合圧を効果的に受け止め、咬合の安定を図ります。ヒトは歯が接触すれば、そこで咬むようになりますが訓練は必要です。
近藤テクニックでは、骨格性の不正咬合を外科手術なしに長期安定咬合を創る矯正と認識されています。そのためにガム・トレーニングをはじめとしたMFTや、咬合平面を変化させて治療する事ばかりが取り上げられがちです。
臼歯の歯軸を変えることによって咬合高径は変わります。それをMFT を使い圧下・挺出させ、噛ませることを訓練し、長期安定を図ります。咬合平面は結果的に変化することになります。近藤テクニックにも確かに限界があり、外科矯正やインプラント矯正を否定するものではありません。側貌の改善などは限界があります。
この勉強会が、近藤テクニックをマスターする目的でも結構ですし、補綴にせよ、ご自身の歯列矯正の手技にせよ、筋機能訓練の考え方を取り入れて、長期に咬合を安定させるヒントになれば幸いです。