5歳から始めること(子どもの口の中は、何歳から気にしたらよいでしょうか?)後期
10歳ころから小学校卒業あたりまでで3番目から後ろの横の歯(側方歯群)が生え変わります。下のわきっちょの歯は3-4-5番目の順に生え変わる事が多いです。上の側方歯群は、日本人は4-3-5番の順に生えかわることが多いです。欧米人は4-5-3番で、これは八重歯になりやすいんです。
この後半戦で生え変わる永久歯は、3本合わせて乳歯のほうが大きい場所です(リーウェイ―スペース・Lee-Way-Space)大きい永久歯の前歯が生えてきて、隣の乳歯を削って生える場所を創る咬合誘導というのは、この小学校高学年で生え変わる永久歯が乳歯よりかなり小さいところをあらかじめ使うという治療です。
つまり前半戦で小さな乳歯が抜けて骨が広がって大きな永久歯が歯列に入りきらないときに隣の乳歯を削ったのですが、これは、この「永久歯のほうが乳歯より小さい」場所をあらかじめ最初に使うためです。歯は、骨の中で頭の先から作られます。最終的には根っこ(歯根)は頭(歯冠)の長さの約2倍になりますが、全長の1/2から2/3くらいできるときに一番生える力が強く、その時期は自由に動きます。生えてから2年たって根っこの先まで骨の中でできてしまうと、その先は隣に空隙があっても動いてくれません。6歳ぐらいで生えてくる歯が8歳ぐらいまでに固定され、そのあと小学校高学年で小さい永久歯が生えてきても、うまくそのスペースは活用できません。
本来のリーウェイスペースの役割(マニアの話)
第一大臼歯の噛み合わせは上顎の第一大臼歯の近心頬側咬頭が下顎の第一大臼歯の頬面溝に噛みこむのが正常咬合Ⅰ級という事になります。ところが乳歯列咬合では第2乳臼歯の遠心壁がバーティカルステップタイプを正常咬合とします。乳歯列の正常咬合のまま永久歯が生えてくると最初はⅡ級(上顎前突)となります。側方歯群の交換によって下顎第一大臼歯がより近心にスリップすることによって第一大臼歯の関係が1級(正常咬合になります)。前歯部は犬歯間幅径の増大によって小さい乳歯から大きな永久歯に生え変えかわりますが、側方歯群は前後への骨の成長が無いので、永久歯が小さいことによって歯ならび・噛み合わせを自然の力で創ってよくのです。咬合誘導はそれを効果的に活用しているのです。
歯医者を掛け持ちされると咬合誘導がうまくゆかない。
咬合誘導によって歯ならび・噛み合わせを創ってゆくのは、乳歯の抜歯や削合のタイミングが全てです。歯医者を掛け持ちされるかたがいますが、「この乳歯は今日、抜かなくてはいけない」タイミングの時に「あっちの歯医者では自分で抜いていいといわれたから抜きたくない」とごねられるたり、ぐらぐらしているけど抜きたくない歯を、あっちの歯医者でついでに抜かれたりすると、咬合誘導はうまくいきません。その際は矯正治療に移行します。乳歯は、ぐらぐらしているから抜歯するのでなく、永久歯がどう生えるか?で抜歯を決めます。歯医者が抜歯しても、患者さん本人が自分で抜いても歯ならび・噛み合わせが悪くならないときは、僕は抜歯しません。
} 歯医者が「自分で抜いていいよ」というのは、子どもが泣くのを押してまで抜歯したくないから逃げているだけのことがあります。なぜ自分で抜いてもいいのか?ちゃんと説明してもらいましょう。
後半戦のむし歯について
仕上げ磨きは、子どもに絵を描かせて「遠近感のある絵が描ける」ようになると手首の運動能力が成熟してきたと判断して、本人と衛生士がマンツーマンで歯磨きの練習をして、仕上げ磨き卒業となります。それが大体小学校高学年です。 小学校高学年ともなると、仕上げ磨きを嫌がる子どもも出てきます。反抗期が始まったの は、立派な大人になるための通過地点だから、おおいによろこばしいことです。乳幼児の時のように毎晩膝枕で仕上げ磨きというわけにもいかないこともあります。 そういう場合は、週に何回か曜日を決めるとか、土曜の晩は染出し液を付けて磨かせる。時間はたっぷりありますので歯の汚れの赤染が落ちるまで自分で磨かせるのもいいでしょう。毎晩だと嫌んだくなりますが。
図体が大きくなっても膝枕が大変なら「スターキーズ・ポジション」というのもあります。
小学校卒業(12歳)で永久歯が生えそろって歯ならび・噛み合わせが完成する、ここが人生のスタートです。
一生使う永久歯がここで生えそろいます。ここからティーンエイジカリエスだとか、大人の歯周病だとか、人生を終えるまでいろんな苦難が待ち構えています。
生まれてから、乳歯が生えて、永久歯に生え変わり始めて、小学校卒業あたりのここで永久歯が生えそろい人生のスタートです。ここの時点で永久歯が、むし歯になっていなくて、歯周病が無くて、歯ならび・噛み合わせがよくて、キチンと鼻呼吸できているように育てましょう。